大型株が売られ、装置株が主役を奪った一日
2026年6月11日の韓国株式市場(KOSPI)は、一言で表すなら「選別的なリスクオン」だった。マクロ環境は弱気シグナルを出しつつも、スクリーナーが把握するパス銘柄は37銘柄、新規通過15銘柄と前日比で回復。しかし市場全体が開いたわけではない。200日移動平均線を上回る銘柄の比率はわずか28.6%、50日線超えも16.5%にとどまり、上昇はごく一部のセクターに集中した。
その「一部」こそが今日の核心だ。半導体装置・部品株とHBM関連メモリ株、そして電力インフラ関連が強く、一方でサムスン電子(005930.KS)やNAVER(035420.KS)など指数構成比率の高い大型株は機関投資家の売り圧力に押された。
サムスン電子:外国人は買い越しも、機関が1.6兆ウォン売り越し
韓国最大の半導体・エレクトロニクスメーカーであるサムスン電子は、本日1.2%安。過去5営業日では14.9%下落しており、短期的な調整が続いている。
需給の内訳が興味深い。外国人投資家は約1,733億ウォンの買い越しを記録した一方、機関投資家は約1兆6,050億ウォン、プログラム売買も約8,896億ウォンの売り越しと、国内機関が積極的に持ち高を削った形だ。
なぜ機関はサムスンを売るのか? 主因の一つはETFリバランスに伴うキャップ制約と見られる。サムスン電子はKOSPI時価総額の約20%を占める最重量銘柄であり、パッシブ運用の機械的な売買が需給を歪めやすい構造にある。ファンダメンタルズの毀損ではなく、「タイミングの問題」として市場参加者はこの圧力の沈静化を待っている状態だ。
SKハイニックス:価格は反発も、機関・プログラム売りと綱引き
世界第2位のDRAMメーカー、SKハイニックス(000660.KS)は本日2.6%高と価格面ではサムスンを上回るパフォーマンスを示した。ただし、機関が約1兆667億ウォン、プログラムが約1兆1,450億ウォンの売り越しと、売り圧力の規模はサムスン以上だ。
外国人は約5,523億ウォンの買い越し。外国人が下値を拾い、国内機関が売り抜ける構図は、短期的には上値を重くする。アナリストが注目するのは「外国人の買いが続くかどうか」よりも、機関・プログラムの売りが縮小するかどうかだ。そのシグナルが出るまで、SKハイニックスの本格的な上昇再開は難しいという見方が多い。
ハンミ半導体:本日の最注目銘柄、+7.8%の急騰
今日最も鮮烈な動きを見せたのはハンミ半導体(042700.KS)だ。HBM(高帯域幅メモリ)向け熱圧着装置「TC Bonder」のトップサプライヤーとして知られる同社は、本日7.8%高と急反発した。
6月5日のIR説明会、6月8日の供給契約公示と、直近のコーポレートアクションが価格に遅れて反映された格好だ。外国人が436億ウォンの買い越し、プログラム買いも119億ウォンと方向が一致しており、今日の需給・価格の組み合わせは分析対象銘柄の中で最も質が高かった。
なお、同社は貸株残高が高い「信用売り(공매도)」銘柄でもある。急騰後の追いかけ買いよりも、上昇後の押し目を確認してからの参入が定石とされる。
WFEスーパーサイクル:装置・部品株が先行反応
UBSが今週リポートで言及した「ウェーハ処理装置(WFE)スーパーサイクル」のテーマが、韓国の中小型装置株に着実に波及している。
本日のスクリーナーで注目を集めた銘柄を見ると:
- 主成エンジニアリング(Jusung Engineering, 036930.KS) — スクリーナー総合1位、相対強度(RS)98.9。半導体・ディスプレイ向けCVD/ALD装置メーカー。ただし外国人の需給はマイナスで、大口参入には慎重さが求められる。
- ウォニックIPS(Wonik IPS, 240810.KS) — 出来高比率3.3倍、外国人買い越し。WFEスーパーサイクルと直結する装置メーカーとして今日最も注目度が高かった。
- コリアサーキット(Korea Circuit, 007810.KS) — ブレイクアウト1位、RS99.1。PCB・実装基板のトップランナーとして、AI/HBM向けパッケージ需要を享受。
- ブイエム(VM, 018290.KS) — 出来高比率2.9倍。装置セクターの短期候補として浮上。
これらはいずれも直接的な装置・部品メーカーであり、大型メモリ株の機関売り圧力とは無縁の「スモールキャップ優位」の日に強さを発揮した。
韓国の半導体輸出統計が確認する需要の実態
今日の相場を支える構造的な根拠として、韓国の半導体輸出急増が複数のレポートで繰り返し言及された。韓国関税庁のデータによれば、AI/HBMおよびLPDDR向けの需要は依然として旺盛であり、メモリメーカーの増設計画も現実的な需要に裏打ちされている。
UBSのWFEスーパーサイクル論とも整合する。装置投資の増加は遅行して統計に現れるため、今の装置株の強さは「次のサイクルの初動」と読む向きも多い。
米国夜間:オラクルAI CAPEX懸念を横目に見る
夜間セッションで意識されるのは米国半導体株(Marvell Technology: MRVL、Micron Technology: MU、Western Digital傘下のSandisk: SNDK)の動向だ。
オラクル(ORCL)が発表したクラウド・AI関連の大規模資金調達計画は、AI需要の強さを示す一方で、コスト膨張と収益化の時間軸に対する懸念も同時に浮上させた。「AI CAPEXは旺盛」というだけで無条件にバリュエーションが拡大する局面ではなくなりつつあるとの見方もあり、フィラデルフィア半導体指数(SOX)の反応と合わせてこれらの銘柄を翌朝確認する必要がある。
明日の注目ポイント
- サムスン電子 29万9,000ウォン攻防 — この水準を割り込むような動きが続くなら、外国人の買い越しでも買い増しは難しくなる。
- SKハイニックスの機関・プログラム売り縮小 — 価格の反発よりも売り圧力の沈静化を確認することが先決。
- ハンミ半導体の窓(ギャップ)維持 — 本日の急騰後、翌日のギャップ維持が確認されれば上昇継続のシグナル。崩れるなら短期反発の消化として対処。
- 装置3銘柄(主成・ウォニックIPS・ブイエム) — 外国人・機関の同時買い越しとVWAP維持が確認できた銘柄を候補に昇格。
まとめ:半導体テーマは強化、主役交代が始まった
6月11日の韓国市場は、「大型メモリ株への機関売り圧力」と「装置・部品株への資金流入」という二つの流れが同時進行した日だった。WFEスーパーサイクルや韓国の半導体輸出データが示す需要の実態は変わっていない。変わったのは、その恩恵を最初に価格に織り込む銘柄群の顔ぶれだ。
サムスン電子・SKハイニックスの需給圧力が解消されるまで、スマートマネーの視線はハンミ半導体、ウォニックIPS、コリアサーキットといった中小型装置・部品株に向き続けるだろう。