2026年7月8日、ソウル市場は全面安に見舞われた。KOSPI(韓国総合株価指数、約800銘柄で構成される韓国の主要株価指標)は午後2時55分時点で前日比4.91%安の7,280.63ポイント、KOSDAQ指数は5.85%安の782.63ポイントを記録した。監視対象の24本のETFがすべて下落するなか、AI電力インフラ関連は10.0%安、防衛関連は9.3%安と、直近の人気テーマが最大の下げを演じた。
だが、この急落の下にこそ、今後の方向を示すシグナルが隠れている。
サムスン電子(005930.KS):好決算でも売られた理由
サムスン電子(005930.KS、韓国最大の半導体・家電コングロマリット、時価総額は韓国市場の約20%を占める)は、この日6.2%安の277,500ウォンで引けた。直近5営業日では11.8%の下落と、短期的な売り圧力が加速している。
しかし業績面は逆の方向を向いている。ミレアセット証券は同日、2026年第2四半期(2Q26)の暫定業績が市場予想を上回ったと評価し、目標株価550,000ウォンを据え置いた。注目ポイントはDRAM・NANDフラッシュの価格上昇、次世代高帯域幅メモリ「HBM4」の価格改定、そして2027年まで続く供給制約の三点だ。
では、なぜ「好決算」銘柄がこれほど売られたのか。
外国人投資家とプログラム取引が同日に大量売却へ転じたことが主因とみられる。外国人の純売越し額は8,741億ウォン、プログラム売越しは5,809億ウォンに達した。一方、国内機関投資家は2,827億ウォンの逆張り買いを入れている。市場では今回の下落を業績悪化ではなく、単一銘柄レバレッジETFを経由した需給圧力や短期的な過熱解消と解釈する声が多い。次の焦点は7月30日10時に予定されているサムスン電子の決算説明会だ。
SKハイニクス(000660.KS):急落中に外国人が逆張り
この日の韓国市場で最も注目すべきシグナルを発したのが、SKハイニクス(000660.KS、世界最大のHBM=高帯域幅メモリの生産メーカーの一つ)だ。
株価は前日比5.7%安の2,076,000ウォン。直近5日では18.9%もの急落で、下げの角度は急峻だ。ところが需給動向はまったく異なる絵を描く。外国人投資家は1,634億ウォンを純買越し、プログラム取引も1,997億ウォンの買い越しに転じた。株価が大幅に下がっているにもかかわらず外国人とプログラムが買い向かっている——この「価格と需給の乖離」は、プロ投資家が注目する典型的なシグナルだ。
同社をめぐっては複数の強気材料が重なっている。米国市場でのADR(米国預託証券)ブックビルディングが好調だったとの観測のほか、DDR4・LPDDR4およびSLC NAND型フラッシュメモリについて2026年第3四半期の製品価格を50〜100%引き上げる提案が浮上。NANDフラッシュの直近1カ月の市場取引価格も33.8%上昇しており、メモリ市況の強さが数字として現れ始めている。
ただし国内機関投資家は5,287億ウォンを売り越しており、外国人と機関の意見は真っ向から割れた。需給が安定するまでには時間がかかる局面だ。
メモリ周辺:ABF基板・素材に確かな変化
韓国半導体エコシステムの中で、もう一つ注目される動きが基板・素材サプライチェーンだ。
台湾の基板大手ユニミクロン(Unimicron)の2026年6月売上高が過去最高を記録し、ABF基板・HDI基板の月次売上は前年同期比36.3%増に達した。半導体パッケージ用素材であるCCL(銅張積層板)やPPO/PPE/OPE/mPPO系の高機能樹脂材料でも、段階的な値上げの動きが確認されている。
この流れが続けば、三星電機(Samsung Electro-Mechanics、009150.KS)、大徳電子(Daeduck Electronics、353200.KS)、コーロン・インダストリーズ(Kolon Industries、120110.KS)などの韓国サプライヤーへの業績改善期待につながる。しかしこの日の韓国市場では素材・部品・装置セクター全体が5.5%安に沈み、三星電機は10.3%安、大徳電子は9.4%安を記録した。
なぜ韓国市場全体が崩れたのか
「業績は悪くないのに株が売られた」——この構図の背景にあるのは、グローバルなリスクオフ(リスク資産を一斉に売る局面)の波だ。
7月8日の韓国市場では、防衛(-9.3%)、AI電力インフラ(-10.0%)、バイオテクノロジー、造船といった直近の人気テーマが広範に売られた。自動車・金融セクターは相対的に下げを抑えたが、プラスで終わったセクターは実質的に存在しない。リスクオフ局面では、直近上昇率の高かったセクターや信用・レバレッジが集中した銘柄ほど売り圧力が強まる傾向がある。
米国市場ではMicron Technology(MU)やMarvell Technology(MRVL)への影響も注目されている。韓国メモリ株の急落を受けた米国半導体株の夜間の値動きが、明日のソウル市場の方向を左右する重要な手がかりとなる。
明日のウォッチリスト
価格の節目
- サムスン電子が277,500ウォンを下回るか維持するか(直近安値水準)
- SKハイニクスが2,076,000ウォンを守れるか
需給の変化
- サムスン電子への外国人・プログラムの売り圧力が和らぐかどうか
- SKハイニクスで外国人買いが継続し、機関売りが鈍化するか
米国市場
- Micron(MU)・Marvell(MRVL)が前日の急落を取り戻す動きになるか
- 逆に韓国メモリ株の下落をさらに追認するような動きになるか
メモリ価格動向
- NAND・DRAMの月次価格トレンドの継続報告と、サムスン電子7月30日決算コールへの市場コンセンサスの動向
総括:業績は本物、タイミングは難しい
7月8日の韓国市場は「ファンダメンタルズと株価の乖離」という現実を改めて示した。メモリ価格上昇の数字は本物であり、基板・素材サプライチェーンにも着実な業績改善の動きが確認できる。サムスン電子のQ2決算は予想を上回り、SKハイニクスのADR需要と価格提案は強気の見通しを支えている。
しかし、外国人・プログラムの大規模な売り圧力が続く局面では、ファンダメンタルズだけで株価を支えることは難しい。SKハイニクスの「急落の中の外国人逆張り買い」というシグナルは、長期的な視点では注目に値する。だが、機関売りが続いている間は、需給転換を確認するまで待つのが合理的な判断だろう。
今日は「買いの日」ではなく、「売り圧力が止まるかどうかを確認する日」だ。その答えは、明朝の米国市場と、明日のソウル市場の開幕前における外国人注文動向が教えてくれる。